日本では高齢化が進むなか、単に65歳以上の人口が増えているだけではなく、75歳以上・85歳以上の高齢者や、認知症・軽度認知障害(MCI)のある高齢者が増えていくことが大きな課題となっています。
これから高齢者住宅や有料老人ホームによる土地活用を考える場合、「高齢者が何人いるか」だけではなく、「どのような支援を必要とする高齢者が増えるのか」まで確認することが重要です。
この記事では、認知症・MCIの将来推計や大阪の高齢者人口の変化を確認しながら、高齢者住宅の需要と土地活用を考える際のポイントを解説します。
認知症とMCIの高齢者は今後どのくらい増える?
厚生労働省が公表している将来推計では、2022年時点の認知症高齢者は約443.2万人、高齢者に占める割合は12.3%と推計されています。
今後は2030年に約523.1万人、2040年には約584.2万人まで増加すると見込まれています。
さらに、認知症には至っていないものの、もの忘れなどの軽度な認知機能障害がみられる「MCI(軽度認知障害)」についても、2022年の約558.5万人から2040年には約612.8万人になると推計されています。
| 年 | 認知症高齢者 | 高齢者に占める割合 | MCI高齢者 |
|---|---|---|---|
| 2022年 | 約443.2万人 | 12.3% | 約558.5万人 |
| 2025年 | 約471.6万人 | 12.9% | 約564.3万人 |
| 2030年 | 約523.1万人 | 14.2% | 約593.1万人 |
| 2035年 | 約565.5万人 | 15.0% | 約607.7万人 |
| 2040年 | 約584.2万人 | 14.9% | 約612.8万人 |
2025年の推計では、認知症とMCIを合わせると1,000万人を超える規模となります。
ただし、MCIは認知症とは異なり、日常生活は自立しているものの軽度の認知機能低下が認められる状態です。認知症とMCIを同じものとして扱うのではなく、高齢者の状態に応じた住まいや生活支援を考える必要があります。
参考:厚生労働省「わが国における認知症およびMCIの患者数と有病率の将来推計」
今後は「85歳以上人口」の動きも重要になります
高齢者住宅の需要を考える場合、65歳以上人口だけを見るのではなく、75歳以上、さらに85歳以上の人口がどのように変化するのかを確認することが重要です。
年齢が高くなるにつれて、介護や医療、日常生活の支援を必要とする可能性も高くなるためです。
厚生労働省の調査では、2022年の認知症有病率は75~79歳で7.1%、80~84歳で16.6%、85~89歳で32.8%、90歳以上では50.3%となっています。
つまり、高齢者人口全体だけではなく、年齢構成の変化まで確認することで、その地域で将来的にどのような高齢者住宅や介護サービスが必要になるのかを考えやすくなります。
大阪でも85歳以上人口や認知症高齢者の増加が見込まれています
大阪府が策定した「大阪府高齢者計画2024」では、2040年に向けて高齢者数の増加が続くと見込まれています。
また、大阪府では高齢者の単身世帯の割合が高く、今後もその割合が増えるとともに、医療と介護の双方を必要とする可能性が高くなる85歳以上人口や認知症高齢者の増加も見込まれています。
大東市では85歳以上人口が2035年ごろまで増加する見込み
大東市の第9期総合介護計画では、市内の75歳以上人口は2027年ごろにピークを迎えると推計されています。
一方で、介護ニーズが高まりやすい85歳以上人口については、2035年ごろまで増加する見込みとされています。
人口全体や高齢者人口が将来的に減少する地域であっても、より高い年齢層が増える期間が続く可能性があります。
そのため、「人口が減るから高齢者住宅の需要も同じように減る」と単純に判断するのではなく、年齢構成や介護需要まで確認することが重要です。
大東市で土地活用を検討されている方は、地域の特徴についてまとめた大東市の土地活用もあわせてご覧ください。
東大阪市でも認知症・MCIへの対応が課題に
東大阪市では、将来的に65歳以上の高齢者の約3.3人に1人が認知症またはMCIの状態になる可能性があるとして、認知機能の早期確認や認知症予防などの取り組みを進めています。
認知症になる前の段階から地域で生活を支える仕組みが重要になっていることが分かります。
東大阪市で土地を所有されている方は、東大阪市の土地活用も参考にしてください。
認知症高齢者が増えれば老人ホームがそのまま不足する、とは限りません
ここは、高齢者住宅を土地活用として考えるうえで重要なポイントです。
認知症高齢者が増えるからといって、そのすべての方が有料老人ホームへ入居するわけではありません。
国は、介護が必要になった場合でも可能な限り住み慣れた地域で生活を続けられるよう、「住まい」「医療」「介護」「介護予防」「生活支援」を一体的に提供する地域包括ケアシステムを推進しています。
また、2024年1月には「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が施行されました。
認知症になった後も本人の意思や尊厳を尊重し、地域の中で生活を続けられる環境を整えていくことが重視されています。
そのため、土地活用についても「認知症高齢者が増えるから老人ホームを建てる」という単純な判断ではなく、その地域でどのような住まいと支援が必要とされているのかを確認することが大切です。
これからの高齢者住宅で確認したい4つのポイント
1.医療・介護と連携できる環境
認知症のある高齢者の場合、住居を提供するだけでは生活を支えられないケースがあります。
訪問診療、訪問看護、介護サービス、薬局など、地域の医療・介護サービスとの連携も重要になります。
高齢者住宅を土地活用として計画するときには、土地そのものの条件だけではなく、周辺にどのような医療・介護資源があるのかも確認する必要があります。
かいこうホームの医療・介護との連携については、医療連携についてをご覧ください。
2.家族やスタッフが移動しやすい立地
一般的な賃貸住宅では、駅からの距離が物件選びの大きな条件になることがあります。
一方、高齢者住宅では駅からの距離だけではなく、家族の訪問、医療・介護スタッフの移動、送迎車両なども考える必要があります。
- 幹線道路からアクセスしやすいか
- 送迎車や訪問車両が出入りできるか
- 周辺に住宅地が形成されているか
- スーパーや医療機関など生活施設があるか
- 家族が訪問しやすい生活圏にあるか
駅から離れた土地であっても、道路環境や周辺の生活環境によっては、高齢者住宅として検討できる可能性があります。
3.高齢者が安全に生活できる建物計画
高齢者の身体機能や認知機能は、入居後も変化する可能性があります。
そのため、段差、廊下、トイレ、浴室、階段、エレベーターなどの設備だけでなく、スタッフが見守りや介助を行いやすい動線も考える必要があります。
一般的な賃貸住宅とは異なり、高齢者が生活することを前提とした建物計画が求められます。
有料老人ホームの建築については、建築会社・建築体制についても参考にしてください。
4.長期間運営できる事業計画
高齢者住宅は、建物が完成すれば土地活用が終了する事業ではありません。
運営事業者、医療・介護連携、建物管理、人材確保、設備の修繕などを含めて、長期間運営を継続できる仕組みが必要です。
土地所有者としては「その土地に建築できるか」だけではなく、「その地域で長期間事業を継続できるか」という視点まで持つことが重要になります。
土地活用として有料老人ホームを検討する場合の基本的な考え方については、老人ホームが土地活用に向く理由でも詳しく解説しています。
有料老人ホームも高齢者の住まいの選択肢の一つです
高齢者向けの住まいには、有料老人ホームだけでなく、サービス付き高齢者向け住宅や認知症対応型共同生活介護(グループホーム)など、さまざまな種類があります。
それぞれ入居対象者や提供されるサービス、運営方法が異なります。
また、有料老人ホームであっても、認知症のある方の受け入れ条件や対応できる介護度などは、施設や運営事業者によって異なります。
認知症高齢者が増えているという理由だけで施設の種類を決めるのではなく、地域需要と運営体制の両方から検討することが重要です。
老人ホームの種類については、老人ホームの種類と特徴をご覧ください。
土地活用では「高齢化率」だけを見ないことが重要です
地域の高齢者需要を確認するとき、高齢化率は分かりやすい指標の一つです。
しかし、高齢者住宅の需要を判断するためには、高齢化率だけでは十分とはいえません。
少なくとも次のような項目を組み合わせて確認することが大切です。
- 65歳以上人口
- 75歳以上人口
- 85歳以上人口
- 認知症・MCIの将来推計
- 要支援・要介護認定者数
- 高齢者単身世帯の割合
- 周辺の高齢者住宅や介護施設の供給状況
- 医療・介護サービスの状況
- 地域の将来人口
- 土地価格や建築費
たとえば同じ高齢化率30%の地域でも、高齢者の年齢構成や単身世帯数、既存施設の供給状況によって、高齢者住宅に対する需要は異なります。
「高齢者が多い土地だから高齢者住宅に向いている」と判断するのではなく、地域の状況を複数の指標から確認することが重要です。
大阪の土地活用では地域ごとの需要を確認しましょう
大阪府内でも、高齢化の進み方や土地を取り巻く環境は地域によって異なります。
大阪市中心部と、大東市・東大阪市・門真市・四條畷市などでは、人口構成、土地価格、住宅地の形成、既存施設、道路環境などに違いがあります。
そのため、「大阪では高齢者が増えている」という大きな数字だけで土地活用を判断するのではなく、実際に土地がある地域の需要を確認することが重要です。
認知症高齢者の増加から考える土地活用の7つのチェックポイント
所有している土地について高齢者住宅を検討する場合は、まず次のような点を確認してみましょう。
- 周辺の75歳以上・85歳以上人口は今後どのように変化するか
- 周辺に高齢者住宅がどの程度供給されているか
- 医療・介護サービスと連携しやすい場所か
- 送迎車や訪問車両が出入りできる道路条件か
- 高齢者住宅を建築できる土地条件か
- 長期間運営できる事業者を確保できるか
- 建築費・賃料・借入を含めた収支が長期間成立するか
確認した結果によっては、有料老人ホームではなく、賃貸住宅、駐車場、売却など、別の選択肢が適している場合もあります。
大切なのは、最初から建物の種類を決めるのではなく、土地の条件と地域需要の両方を確認したうえで活用方法を比較することです。
土地活用の選択肢を比較したい方は、土地活用の種類や土地活用比較もご覧ください。
まとめ|認知症高齢者の増加から「これから必要とされる住まい」を考える
日本では今後、認知症やMCIのある高齢者、85歳以上の高齢者、単身で暮らす高齢者が増えていくことが予測されています。
一方で、高齢者政策は「施設へ入居すること」だけを目的としているわけではありません。
住み慣れた地域の中で、住まい・医療・介護・生活支援を組み合わせながら生活を続けられる環境を整えることが重視されています。
だからこそ、これから高齢者住宅を土地活用として考える場合には、「高齢者人口が増えているか」から一歩進んで、その地域ではどのような住まいが必要になるのかを確認することが重要です。
大東市・東大阪市・門真市・四條畷市・大阪市などで土地を所有されており、売却・賃貸住宅・駐車場・高齢者住宅など今後の使い方を検討されている方は、土地条件と地域需要の両方から比較してみましょう。
かいこうホームでは、有料老人ホームによる土地活用をはじめ、土地の条件や所有者様の目的に応じた活用方法をご相談いただけます。